ワクチンを接種する前に

妊娠中や授乳中、妊活中の場合はワクチンを接種してもよいでしょうか?

ワクチンの種類によって、受けられるワクチン、受けられないワクチンがあります

現在、ワクチンは大きく「生ワクチン」「不活化ワクチン」の二つに分類されます。
生ワクチンは、毒性や病原性を低下させた(生きている)細菌・ウイルスをそのままワクチンとして用いているため、ほとんどの生ワクチンは、胎児への影響を考慮し、全妊娠期間を通じて原則として接種はできません。
そのため、麻しん(はしか)・風しん・水痘(みずぼうそう)・おたふくかぜなどの生ワクチンは、妊娠前の接種が推奨されています。
一方、不活化ワクチンは、毒性や感染力を失った(生きていない)細菌・ウイルスもしくはそれらの一部を利用したワクチンです。
不活化ワクチン、不活化ワクチンに分類されるトキソイド(死滅したウイルスや細菌が作り出す毒素の毒性をなくし、毒性のない抗原で免疫反応を起こすワクチン)は、生ワクチンと異なり、接種が胎児に影響を与えるとは考えられていないので、妊活中、妊娠・授乳中も接種は可能です。
このような理由から、妊娠中や授乳中、妊活中の場合では、ワクチンの種類によって、接種を受けられるワクチン、受けられないワクチンがあるということになります。

インフルエンザワクチンや新型コロナワクチンも接種することができます

妊娠時は免疫寛容(めんえきかんよう:免疫システムが異物を受け入れること)により、免疫機能が低下し、さまざまな感染症に感染しやすくなっているため、インフルエンザなどの呼吸器感染症は重症化しやすいといわれています1)。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンであるため、妊娠中のワクチン接種は問題ないと考えられており、妊婦に対するインフルエンザワクチンの接種は基本的に推奨されています。米国では2004年より妊娠初期を含む全期間での妊婦に対象を拡大、日本では2009年に発生したインフルエンザウイルスの流行以来、妊婦への接種が推奨されています1)
2021年から接種が始まった新型コロナウイルス感染症のワクチンについては、厚生労働省のホームページ「新型コロナワクチンQ&A【2024年5月時点】」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_qa_archive.html#truth_4)において、「妊娠中、授乳中、妊娠を計画中の方も、新型コロナワクチンの接種を受けていただけます」とされています。日本で承認されている新型コロナワクチンの安全性に関しては、妊娠、胎児、母乳、生殖器に悪影響を及ぼしたということは報告されていません(2023年3月時点)2)
また、日本で使用されている新型コロナワクチンの種類の一つ、mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンにおいても、妊婦に投与した際の有効性と安全性に関する調査結果が数多く示されてきています。

妊娠した女性が風しんにかかると、赤ちゃんに難聴や心疾患などの障害を起こす先天性風しん症候群が出る可能性があります。妊娠前に女性だけでなく、パートナーや周りにいる男性もワクチン接種をご検討ください。

厚生労働省 風しんについて
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/dl/poster05.pdf
2024/5/31参照

1) 山本佳:2 章 妊婦への予防接種. あなたも名医! エキスパートたちが教える! ワクチン【総整理】(竹下望編). 日本医事新報社:29-32, 2020

2) 厚生労働省:リーフレット「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策~妊婦の方々へ~」(2023 年 3 月版)
https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/leaflet20230331.pdf
2024/5/31 参照

監修熊本大学 特任教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏 先生

2024年9月作成 VAC46O029A