監修:聖マリアンナ医科大学 小児科 准教授 勝田 友博 先生

RSウイルス感染症について

RSウイルス感染症はどんな病気?

RSウイルス(Respiratory syncytial virus)感染症は、RSウイルスにより引き起こされます1-5)。世界中に存在するウイルスで年齢を問わず感染しますが、とくに乳幼児と高齢者では注意が必要です1-5)。以前は夏から増加が始まり、秋に流行のピークがみられていましたが、2021年以降は春から増加が始まり、夏に流行のピークがみられています6)

感染経路

RSウイルス感染症は、主に、ウイルスをもっている人のせきやくしゃみなどで飛び散った小さな唾(つば)のしぶきを吸い込んで感染します(飛沫感染:ひまつかんせん)5-7)。また、ウイルスが付いたものを触り、その手指で鼻や口に触れることで感染することもあります(接触感染)5-7)。なお、2歳までにほとんどの子どもが初感染するとされています4-6)

どんな症状がでるの?

RSウイルスに感染してから症状が出てくるまでの期間は2~8日(通常4~6日)とされています5)。呼吸器症状が特徴的で、とくに初感染時はウイルスが肺に達しやすく、症状が強くなることがあります2)

【乳幼児】
はじめは鼻水やせき、発熱などで、多くの人はやがて軽快します1,3,5)。ウイルスが気管支(きかんし)や肺に達すると気管支炎・細気管支炎(さいきかんしえん)・肺炎に進行することがあり、激しいせきや、呼吸する時にゼーゼー・ヒューヒューと音が出る喘鳴(ぜんめい)などが出てきます1,3,7)
とくに、生後6ヵ月未満の赤ちゃん、心臓や肺などに病気のある子、神経や筋肉に障害のある子、免疫力が弱い子、早産の子などが感染すると、重症化して危険な状態になることもあります1,2,5,7)

【高齢者】2,4)
発熱、せき、痰(たん)、喘鳴、呼吸困難などがみられ、しばしば細気管支炎、肺炎など重症化する場合があります。

気になる症状を相談できる診療科

RSウイルスに感染した場合、最初はかぜのような症状が出ますのでかかりつけ医などへご相談いただき、呼吸が苦しい、または、食事や水分摂取ができないときは受診をご検討ください6)

【子ども】
かかりつけの小児科や耳鼻咽喉科などに相談してみましょう。

【大人】
まず、かかりつけの内科などへの受診をご検討ください。

RSウイルス感染症ワクチンについて

ワクチンの役割

RSウイルスに感染すると、肺炎や細気管支炎に進行する(重症化する)ことがあります。ワクチンを接種することにより、RSウイルス感染症の予防が期待できます8)

ワクチンを接種したいときの診療科

比較的新しいワクチンであり、執筆時点(2024年6月)では、国内における接種体制は多くの施設で準備中です。事前に、かかりつけ医や近隣のクリニックなどにご相談ください。

【子ども】
子どもへの接種適応はありません。

【妊娠24~36週の妊婦】
一部の産婦人科や小児科などで接種できます。

【60歳以上】
一部の内科などで接種できます。

RSウイルス感染症を予防するワクチン

RSウイルス感染症を予防するワクチンは、不活化ワクチン(注射)です(不活化ワクチンについてはこちら9)。妊婦を対象としたワクチンは1種類、高齢者を対象としたワクチンは2種類あります。

定期/任意接種、接種費用、ワクチン接種のタイミング

RSウイルスワクチンは任意接種です。任意接種は費用(原則自己負担)がかかります(任意接種についてはこちら)。

【妊娠24~36週の妊婦】8,9)
1回接種です。妊婦に接種することにより、母体からの免疫を赤ちゃんが受け継ぎます(母子免疫)。国内では特に妊娠28~36週の間に接種することが望ましいとされています。

【60歳以上】8-10)
1回接種です。

  • 1)厚生労働省:感染症法に基づく医師の届出のお願い-RSウイルス感染症
    https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-15.html2024/5/16参照
  • 2)国立感染症研究所:疾患名で探す感染症の情報 RSウイルス感染症とは
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/317-rs-intro.html 2024/5/16参照
  • 3)堤裕幸:ウイルス,2005;55(1): 77-84
  • 4)国立感染症研究所:成人・高齢者におけるRSウイルス感染症の重要性
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-sp/2296-related-articles/related-articles-412/4713-dj4127.html 2024/5/16参照
  • 5)Kimberlin DW, Banerjee R, Barnett ED, Lynfield R, Sawyer MH. Red Book: 2024-2027 Report of the Committee on Infectious Diseases. American Academy of Pediatrics. 2024
  • 6)厚生労働省:「RSウイルス感染症」に注意しましょう
    https://www.mhlw.go.jp/content/001121510.pdf 2024/5/16参照
  • 7)厚生労働省:RSウイルス感染症Q&A(令和6年1月15日改訂)
    https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/rs_qa.html 2024/5/16参照
  • 8)厚生労働省:第24回予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会 RSウイルス感染症の予防について(2024(令和6)年3月14日)
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38570.html 2024/5/16参照
  • 9)国立感染症研究所:日本で接種可能なワクチンの種類(2024年4月現在)
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/vaccine-j/249-vaccine/589-atpcs003.html 2024/5/16参照
  • 10)国立感染症研究所:日本の定期/任意予防接種スケジュール 2024年4月1日現在
    https://www.niid.go.jp/niid/images/vaccine/schedule/2024/JP20240401_02.pdf 2024/5/16参照

2024年9月作成 VAC46O029A