監修:聖マリアンナ医科大学 小児科 准教授 勝田 友博 先生

麻しん(はしか)について

麻しん(はしか)はどんな病気?

麻しん(読み:ましん)は、漢字では「麻疹」と書きます。ふだんの会話では、別名である「はしか」のほうが聞きなじみがあるかもしれません。麻しんウイルスによって引き起こされる感染症です1-4)

感染経路

麻しんウイルスの感染力は、非常に強いです1)。主に、空気中に漂う病原体(ウイルス)を吸い込んでも感染します(空気感染)1-4)。また、感染している人のくしゃみやせきを吸い込んだり(飛沫感染:ひまつかんせん)、麻しんウイルスが付いたものを触って、そのまま口や鼻を触ったりすると感染することがあります(接触感染)1-4)

どんな症状がでるの?

感染してから症状が出てくるまでの期間は、約11~12日間とされています5)。最初は38℃程度の発熱、せき、鼻水、目が赤くなるなどの症状が出ます1-3,5)。その後、熱がぶり返して39℃以上になり、口の中に白いブツブツができます(コプリック斑:こぷりっくはん)。さらに、全身に赤いブツブツ(発疹:ほっしん)ができた後に治っていくのが一般的です3,5)
ただ、麻しんウイルスに感染すると免疫機能が弱まるため、他の菌・ウイルスなどに感染しやすくなり、肺炎や中耳炎などが起こりやすくなります1,4,5)
まれに、麻しんに感染して数年~10年程度経ってから脳炎を発症することもあります3,5)
また、肺炎や脳炎は重症化すると死亡リスクが高まります2,3)

気になる症状を相談できる診療科

麻しんのような症状がある場合は、受診するまえにクリニックや病院に電話をして、具体的な受診方法を事前に相談しましょう。

【子ども】
かかりつけの小児科などに相談してみましょう。

【大人】
まず、かかりつけの内科などへの受診をご相談ください。

麻しん(はしか)ワクチンについて

ワクチンの役割

麻しんは、2015年に国内から排除されたことが認定されました3)。しかし、海外から持ち込まれた麻しんウイルスが広がってしまうことがあり、国内で流行することがあります3)
麻しんは空気感染するため、ワクチン(主に麻しん風しん混合ワクチンが接種されています)を接種することで、感染リスクを抑えることができます1)

ワクチンを接種したいときの診療科

【子ども】
小児科・耳鼻咽喉科のある病院・クリニックなどの多くで接種できます。

【大人】
大人でも内科などで任意接種でワクチンを受けられます。お近くの医療機関を検索するか、かかりつけ医などにお問い合わせください。

麻しんを予防するワクチン

麻しん単独のワクチンと、麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)の2種類(注射)があります。これらは生ワクチンのため、妊婦は接種できません(生ワクチンについてはこちら1)

定期/任意接種、接種費用、ワクチン接種のタイミング

定期接種は原則無料です。任意接種は費用(原則自己負担)がかかります(定期/任意接種についてはこちら)。

【子ども】
麻しんワクチンの一般的なスケジュールは、2種類とも同じですが、原則はMRワクチンの接種とされています6)

一般的なスケジュール3,6-8)

定期接種で確実に免疫がつくように、1歳以降の早期と5歳~7歳未満(小学校入学前の1年間)の2回接種が推奨されています。

【大人】
接種する場合は任意接種になります。麻しんにかかったことがない場合、かつ、麻しんの予防接種を2回接種したかどうかがわからない場合は、MRワクチンの接種(2回)が推奨されます4)。以下の項目に当てはまる人は、接種をご検討ください。

  • 今まで麻しんにかかったことがなく、ワクチン未接種または1回しか接種をしていない人(とくに医療関係者、児童福祉施設・学校等の職員、医療・福祉・保育・教育に係わる大学および専修学校の学生、海外渡航者、空港職員、妊婦・0歳児・免疫不全(免疫が十分に機能できない)の状態にある人の周囲にいる家族など)4,9)
  • 妊娠を考えている人(接種後、2ヵ月程度の避妊が必要)1,2)

ワクチンの接種率

2021年度「定期の予防接種実施者数」(厚生労働省)によると、1期,2期の麻しんワクチンを接種した子どもの割合(実施率)はそれぞれ93.5%,93.8%でした10)

ワクチンの副反応

麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)の主な副反応として、接種部位が赤くなったり、はれることがあるほか、38℃以上の熱や赤いブツブツ、高熱によるけいれんや脳炎・脳症などを起こすこともあります。また、接種後(30分ほど)は浮腫(むくみ)やアナフィラキシー(重いアレルギー反応)などにも注意が必要です。重い副反応として、血小板減少性紫斑病(けっしょうばんげんしょうせいしはんびょう)などがみられる場合があります3-4)

  • 1)厚生労働省:感染症情報 麻しんについて
    https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/measles/index.html 2024/4/26参照
  • 2)国立感染症研究所:疾患名で探す感染症の情報 麻疹とは
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/518-measles.html 2024/4/26参照
  • 3)日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」: B-07 麻疹・風疹ワクチン2018/03作成ver.1
    https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_B-07mashinhusin_202312.pdf 2024/4/26参照
  • 4)予防接種ガイドライン等検討委員会執筆・監修:予防接種ガイドライン2024年度版 予防接種リサーチセンター: 81・83‐84・118-119,2024
  • 5)Kimberlin DW, Banerjee R, Barnett ED, Lynfield R, Sawyer MH. Red Book: 2024-2027 Report of the Committee on Infectious Diseases. American Academy of Pediatrics. 2024.
  • 6)国立感染症研究所:日本の定期/任意予防接種スケジュール2024年4月1日現在
    https://www.niid.go.jp/niid/images/vaccine/schedule/2024/JP20240401_02.pdf 2024/4/26参照
  • 7)日本小児科学会:日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール 2024年4月1日版
    https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20240401_vaccine_schedule.pdf 2024/4/26参照
  • 8)厚生労働省:定期接種実施要領 (令和6年3月29日改正)
    https://www.mhlw.go.jp/content/001238891.pdf 2024/4/26参照
  • 9)日本環境感染学会. 医療関係者のためのワクチンガイドライン 第3版. 2020:
    http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/vaccine-guideline_03-5.pdf 2024/4/26参照
  • 10)厚生労働省:定期の予防接種実施者数
    https://www.mhlw.go.jp/topics/bcg/other/5.html 2024/4/26参照

2024年9月作成 VAC46O029A