監修:聖マリアンナ医科大学 小児科 准教授 勝田 友博 先生

おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)について

おたふくかぜはどんな病気?

おたふくかぜは、ムンプス(おたふくかぜ)ウイルスによって引き起こされる感染症で、流行性耳下腺炎、ムンプスとも呼ばれます1,2)。子どもも大人もかかりますが、最も多くかかるのは小学校低学年の子どもです3)。なお、おたふくかぜは数年ごとに流行しています4)

感染経路

ムンプスウイルスは、主に唾(つば、唾液)を介してうつるとされています2)。例えば、感染している人のくしゃみやせきを吸い込むと感染することがあります(飛沫感染:ひまつかんせん)1-5)。また、ウイルスが付着した手で口や鼻を触ったりすることなどで感染することもあります(接触感染)1)

どんな症状がでるの?

おたふくかぜは、感染してから症状が出てくるまでの期間は12〜25日(一般的には16〜18日)とされています5)。感染しても無症状のままの人もいますが5)、“おたふく”と名がつくように、両側のほお(唾液腺)がはれるのが一番の特徴で、熱が出ることもあります1,2)。症状は軽いことが多いのですが1)、ウイルスが全身に広がることによってさまざまな病気を引き起こすことがあります1-5)。無菌性髄膜炎(むきんせいずいまくえん)や脳炎、膵炎(すいえん)、不可逆性(治らない)の難聴などの重い病気になることもありますし、男性では精巣炎、女性では卵巣炎などを起こすこともあります1-5)。加えて、妊婦が感染すると流産する可能性が高まります2)

気になる症状を相談できる診療科

おたふくかぜのほおがはれる症状は、見た目が変わるため異常に気づきやすいです。

【子ども】
かかりつけの小児科や耳鼻咽喉科などに相談してみましょう。

【大人】
まず、かかりつけの内科や耳鼻咽喉科などへの受診をご検討ください。

おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)ワクチンについて

ワクチンの役割

おたふくかぜワクチンを接種することによって、発症を予防したり、ムンプスウイルスに感染して発症したときの症状を軽くしたりすることが期待できます(重症化予防)3,5)。また、接種率が高くなると感染拡大を抑える効果も期待できます(集団免疫)6)

ワクチンを接種したいときの診療科

【子ども】
小児科・耳鼻咽喉科のある病院・クリニックなどの多くで接種できます。

【大人】
おたふくかぜにかかった記憶のない人、前回のワクチン接種から長い期間が経過している人であれば、接種することを検討してもよいでしょう。大人でも内科などで任意接種でワクチンを受けられます。お近くの医療機関を検索するか、かかりつけ医などにお問い合わせください。

おたふくかぜを予防するワクチン

おたふくかぜの予防が期待できるワクチンは2種類(注射)あります7)。これらは生ワクチンのため、妊婦さんは接種できません(生ワクチンについてはこちら2)

定期/任意接種、接種費用

おたふくかぜワクチンは、定期接種ではなく任意接種です。そのため、費用(原則自己負担)がかかります(定期/任意接種についてはこちら)。

ワクチン接種のタイミング

【子ども】
おたふくかぜワクチンの一般的なスケジュールは、2種類とも同じです。

一般的なスケジュール3,8,9)

予防効果を確実にするため、1歳以降の早期と5歳~7歳未満(小学校就学前)の2回接種が推奨されています。

【大人】
接種のタイミング、スケジュールは決まっていません。

ワクチンの接種率

接種率は40%未満です4)

ワクチンの副反応

おたふくかぜワクチンの主な副反応として、接種後に微熱や耳の下などがはれるほか、無菌性髄膜炎や脳炎などが起こることもあります1,5,6,10)
ただし、ワクチンの副反応とおたふくかぜにかかった場合(自然感染)とでみてみると、
  • 無菌性髄膜炎の発生率は、自然感染のほうが高い10)
  • ワクチン接種後の無菌性髄膜炎の発生は、生命の危険にさらされる可能性が低い(予後良好)10)
といったことがわかっており、とくに子どもにとって重要なワクチンだと考えられています。
  • 1)国立感染症研究所:疾患名で探す感染症の情報 流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/529-mumps.html 2024/4/26参照
  • 2)日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」:B-08 おたふくかぜワクチン2018/03作成ver.1
    https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_B-08otahuku_202312.pdf 2024/4/26参照
  • 3)予防接種ガイドライン等検討委員会執筆・監修:予防接種ガイドライン2024年度版 予防接種リサーチセンター:112-114・124‐125,2024
  • 4)国立感染症研究所. 流行性耳下腺炎. Infectious Agents Surveillance Report. 2016;37:185-6.
  • 5)Kimberlin DW, Banerjee R, Barnett ED, Lynfield R, Sawyer MH. Red Book: 2024-2027 Report of the Committee on Infectious Diseases. American Academy of Pediatrics. 2024.
  • 6)厚生労働省 予防接種部会 ワクチン評価に関する小委員会 おたふくかぜワクチン作業チーム:おたふくかぜワクチン作業チーム報告書, p20,平成23年3月11日
    https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000014wdd-att/2r98520000016rqu.pdf 2024/4/26参照
  • 7)厚生労働省 厚⽣科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本⽅針部会:「おたふくかぜワクチンについて」 令和6年1月24日
    https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001195975.pdf 2024/4/26参照
  • 8)日本小児科学会:日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール 2024年4月1日版
    https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20240401_vaccine_schedule.pdf 2024/4/26参照
  • 9)国立感染症研究所 :日本の定期/任意予防接種スケジュール 2024年4月1日現在
    https://www.niid.go.jp/niid/images/vaccine/schedule/2024/JP20240401_02.pdf 2024/4/26参照
  • 10)厚生労働省 厚⽣科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本⽅針部会:「おたふくかぜワクチン接種後の副反応に関する全国調査」の結果について(令和6年1月24日)
    https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001195976.pdf 2024/4/26参照

2024年9月作成 VAC46O029A