監修:聖マリアンナ医科大学 小児科 准教授 勝田 友博 先生

ヒトパピローマウイルス感染症について

ヒトパピローマウイルス感染症はどんな病気?

ヒトパピローマウイルス感染症は、ヒトパピローマウイルス(HPV)によって引き起こされ、病気の原因になることがあります1-5)

感染経路

HPVは、皮膚と粘膜が直接触れることによって感染すると考えられています2,5)。性的接触が代表的です1,4,5)

症状/HPVに感染すると起こる可能性のある病気

HPVは、感染してすぐに何らかの症状を起こすわけではありません。しかし、HPVの一部の種類(型)が、がんを引き起こすことがあります3,5)。最も懸念されるのが子宮頸がん(しきゅうけいがん・女性のみ)で1-5)、肛門がんや腟(ちつ・女性のみ)がん、咽頭(いんとう)がん、陰茎(いんけい・男性のみ)がんなどを引き起こすこともあります1,2,5)。また、尖圭(せんけい)コンジローマという良性のいぼを引き起こすウイルスでもあります1,2,5)
がんは、進行するまで症状がないため気づかない/気づかれないことがあります。最も大切なのは、がん検診による早期発見です2,3,5)

ヒトパピローマウイルス感染症ワクチンについて

ワクチンの役割

HPVが原因で起こりうる、子宮頸がんをはじめとしたさまざまな病気の予防につながります1,2,5)

ワクチンを接種したいときの診療科

一部のクリニックや病院では、HPVワクチンを常備していない可能性があります。受診前に電話などで確認するか、定期接種またはキャッチアップ接種*(後述)の場合はお住いの市区町村に問い合わせたほうがよいでしょう。


【子ども(小学校6年生〜高校1年生)】

小児科・耳鼻咽喉科のある病院・クリニックなどの多くで定期接種として接種できます。

【大人(高校2年生以降)】
産婦人科や内科などで任意接種として接種できます。一部の対象者はキャッチアップ接種として無料で接種することも可能です。

HPVを予防するワクチン

現在、3種類のHPVを予防するワクチン(注射)があります1,2)

  • 2価ワクチン(HPVの16、18型を予防)
  • 4価ワクチン(HPVの6、11、16、18型を予防)
  • 9価ワクチン(HPVの6、11、16、18、31、33、45、52、58型を予防)

定期/任意接種、接種費用、ワクチン接種のタイミング

定期接種は原則無料です。任意接種は費用(原則自己負担)がかかります(定期/任意接種についてはこちら)。

【子ども(16歳以下)】

一般的なスケジュール1,2,6-8)

12~16歳(小学校6年生~高校1年生相当)の女子は、定期接種になっています。基本的に同じワクチンを複数回接種します※)
接種するワクチンによって、スケジュールが異なります。
※原則として同じ種類のワクチンを接種することが推奨されますが、医師と相談のうえ、2価、4価を接種している場合、残りの接種を9価に変更して完了させることができます。この場合も定期接種の対象となります。

  • 2価ワクチン
一定の間隔を空けて、合計3回接種します。

標準的な接種スケジュール

標準的な接種ができなかった場合

国内では、2価ワクチンは任意接種であっても男子への接種はできません。
  • 4価ワクチン
一定の間隔を空けて、合計3回接種します。

標準的な接種スケジュール

標準的な接種ができなかった場合

なお、4価ワクチンは国内でも9歳以上の男子に任意接種ができます2,7)
  • 9価ワクチン

一定の間隔を空けて、接種します。9価ワクチンは15歳を境に、接種回数が変わり、1回目の接種を15歳未満で受ける場合は合計2回、1回目の接種を15歳以降で受ける場合は合計3回接種します。

標準的な接種スケジュール① 1回目が15歳未満

標準的な接種スケジュール② 1回目が15歳以降

標準的な接種ができなかった場合

国内では、9価ワクチンは任意接種であっても男子への接種はできません。

【*キャッチアップ接種】
HPVワクチンは接種後に生じうる多様な症状等について十分に情報提供できない状況にあったことから、積極的な勧奨を控えた時期がありました9)。そのため、公費(無料)でのキャッチアップ接種が行われています1-3,6-8)。この接種は、令和7年(2025年)3月末まで行われる予定です9)
令和6年度(2024)の対象者は以下の通りです9)

  • HPVワクチンを3回接種ができなかった、以下の出生日に該当する女子
    1997年4月2日~2008年4月1日生まれ

【大人】
任意接種になります。

ワクチンの接種率

2021年度「定期の予防接種実施者数」(厚生労働省)によると、3回のHPVワクチン接種が完了した人の割合(実施率)は26.2%でした10)。(2021年度の時点ではHPV9を含む全てのHPVワクチンは3回接種が推奨されていました)

ワクチンの副反応

HPVワクチンの主な副反応として、接種した部位のはれや痛み・赤み、発熱やだるさなどがでる可能性があります2,3)。なお、このワクチンを接種した際に痛みや運動障害といった症状が報告されていますが、ワクチンの影響については不明とされています2)

  • 1)厚生労働省:予防接種情報 ヒトパピローマウイルス感染症
    https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/ 2024/4/30参照
  • 2)日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」:B-12 ヒトパピローマウイルスワクチン2023/04作成ver.1
    https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_B-12hitopapiroma_202312.pdf 2024/4/30参照
  • 3)予防接種ガイドライン等検討委員会執筆・監修:予防接種ガイドライン2024年度版 予防接種リサーチセンター: 91-99,2024
  • 4)厚生労働省 検疫所 FORTH:ヒトパピローマウイルス(HPV)と子宮頸がんワクチン (ファクトシート) 2014年11月
    https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2014/11281518.html 2024/4/30参照
  • 5)Kimberlin DW, Banerjee R, Barnett ED, Lynfield R, Sawyer MH. Red Book: 2024-2027 Report of the Committee on Infectious Diseases. American Academy of Pediatrics. 2024.
    [2] Centers for Disease Control and Prevention. Epidemiology and Prevention of Vaccine-Preventable Diseases (Pink Book) 14th edition. 2021.
  • 6)日本小児科学会:日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール 2024年4月1日版 https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20240401_vaccine_schedule.pdf 2024/4/30参照
  • 7)国立感染症研究所:日本の定期/任意予防接種スケジュール 2024年4月1日現在
    https://www.niid.go.jp/niid/images/vaccine/schedule/2024/JP20240401_02.pdf 2024/4/30参照
  • 8)厚生労働省:定期接種実施要領(令和6年3月29日改正)
    https://www.mhlw.go.jp/content/001238891.pdf 2024/4/30参照
  • 9)厚生労働省:HPVワクチンの接種を逃した方へ~キャッチアップ接種のご案内
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/hpv_catch-up-vaccination.html 2024/4/30参照
  • 10)厚生労働省:定期の予防接種実施者数
    https://www.mhlw.go.jp/topics/bcg/other/5.html 2024/3/30参照

2024年9月作成 VAC46O029A