監修:聖マリアンナ医科大学 小児科 准教授 勝田 友博 先生

風しん(三日ばしか)について

風しん(三日ばしか)はどんな病気?

風しん(読み:ふうしん)は、漢字では「風疹」と書きます。風しんウイルスによって引き起こされる感染症です。麻しん(はしか)と似た症状があらわれますが、症状が続くのは3日程度のため「三日ばしか」とも呼ばれます(麻しんについてはこちら1-4)

感染経路

感染している人のくしゃみやせきを吸い込むと感染します(飛沫感染:ひまつかんせん)1-3)。風しんウイルスは、1人から5~7人に感染する強い感染力があります1)

どんな症状がでるの?

感染後、症状が出てくるまでの期間は12~23日程度(平均17日)とされています5)。主な症状として、発疹(ほっしん、麻しんに比べて淡い赤いブツブツ)、発熱、リンパ節のはれなどが知られています1-5)。通常、子どもは軽い症状ですみますが、まれに脳炎などを引き起こすことがあります2,4,5)
大人が風しんにかかっても25~50%の人は無症状と言われていますが5)、子どもと比べ手指のこわばりや関節炎などが出やすいとされています2,4,5)。また、妊娠20週頃までに風しんにかかってしまうと、胎児にも感染し、難聴・生まれつきの心臓病・白内障・発育発達の遅れといった「先天性風しん症候群」を発症することがあります1-5)

気になる症状を相談できる診療科

風しんのような症状がある場合は、受診するまえにクリニックや病院に電話をして、具体的な受診方法を事前に相談しましょう。

【子ども】
かかりつけの小児科などに相談してみましょう。

【大人】
まず、かかりつけの内科などへの受診をご相談ください。

風しん(三日ばしか)ワクチンについて

ワクチンの役割

風しんは根本的な治療法がないため、ワクチン(主に麻しん風しん混合ワクチンが接種されています)での予防が重要です1,5)。また、「先天性風しん症候群」から赤ちゃんを守る効果も期待できます1,5)

ワクチンを接種したいときの診療科

【子ども】
小児科・耳鼻咽喉科のある病院・クリニックなどの多くで接種できます。

【大人】
大人でも内科などで任意接種(2025年3月までは一部の大人は定期接種、詳細は後述)でワクチンを受けられます。お近くの医療機関を検索するか、かかりつけ医などにお問い合わせください。

風しんを予防するワクチン

風しん単独のワクチンと、麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)の2種類(注射)があります。これらは生ワクチンのため、妊婦は接種できません(生ワクチンについてはこちら1)

定期/任意接種、接種費用、ワクチン接種のタイミング

定期接種は原則無料です。任意接種は費用(原則自己負担)がかかります(定期/任意接種についてはこちら)。

【子ども】
風しんワクチンの一般的なスケジュールは、2種類とも同じですが、原則はMRワクチンの接種とされています。

一般的なスケジュール3,6-8)

定期接種で確実に免疫がつくように、1歳以降の早期と5歳~7歳未満(小学校入学前の1年間)の2回接種が推奨されています。

【大人】
2025年3月31日までですが、抗体価(こうたいか:免疫の強さ)が低い(風しんに対する免疫が十分でない)男性の一部を対象に定期接種が行われています4,6,9)。原則として、MRワクチンを接種します6,8)

上記の人以外は任意接種です。以下の項目に当てはまる人は、接種をご検討ください。

  • 今まで風しんにかかったことがない、ワクチン未接種または1回しか接種をしていない人(とくに医療関係者、児童福祉施設・学校等の職員、医療・福祉・保育・教育に関わる大学および専修学校の学生、海外渡航者、空港職員、妊婦・0歳児・免疫不全(免疫が十分に機能できない)の状態にある人の周囲にいる家族など)4,10)
  • 代後半~40代の女性、妊娠を考えている人(接種後、2ヵ月程度の避妊が必要)4)
  • 出産直後の女性のうち、風しんの抗体価が十分ではない人4)

ワクチンの接種率

2021年度「定期の予防接種実施者数」(厚生労働省)によると、1期,2期の風しんワクチンを接種した子どもの割合(実施率)はそれぞれ93.5%,93.8%でした11)。大人の定期接種(5期)は、2022年11月までに風しんに対する免疫を調べる検査(抗体検査)を受けた人は対象人口の28.6%、予防接種を受けた人は対象人口の6.2%でした12)

ワクチンの副反応

麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)の主な副反応として、接種部位が赤くなったり、はれることがあるほか、38℃以上の熱や赤いブツブツ、高熱によるけいれんや脳炎・脳症などを起こすこともあります。また、接種後(30分ほど)は浮腫(むくみ)やアナフィラキシー(重いアレルギー反応)などにも注意が必要です。重い副反応として、血小板減少性紫斑病(けっしょうばんげんしょうせいしはんびょう)などがみられる場合があります3,4)

  • 1)厚生労働省:感染症・予防接種情報 風しんについて
    https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/ 2024/4/26参照
  • 2)国立感染症研究所:疾患名で探す感染症の情報 風疹とは
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/430-rubella-intro.html 2024/4/26参照
  • 3)日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」: B-07 麻疹・風疹ワクチン 2018/03作成ver.1
    https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_B-07mashinhusin_202312.pdf 2024/4/26参照
  • 4)予防接種ガイドライン等検討委員会執筆・監修:予防接種ガイドライン2024年度版 予防接種リサーチセンター: 14‐15・81-84・118-119,2024
  • 5)Kimberlin DW, Banerjee R, Barnett ED, Lynfield R, Sawyer MH. Red Book: 2024-2027 Report of the Committee on Infectious Diseases. American Academy of Pediatrics. 2024.
  • 6)国立感染症研究所:日本の定期/任意予防接種スケジュール2024年4月1日現在
    https://www.niid.go.jp/niid/images/vaccine/schedule/2024/JP20240401_02.pdf 2024/4/26参照
  • 7)日本小児科学会:日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール 2024年4月1日版
    https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20240401_vaccine_schedule.pdf 2024/4/26参照
  • 8)厚生労働省:定期接種実施要領(令和6年3月29日改正)
    https://www.mhlw.go.jp/content/001238891.pdf 2024/4/26参照
  • 9)厚生労働省:感染症・予防接種情報 風しんの追加的対策について
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/index_00001.html 2024/4/26参照
  • 10)日本環境感染学会. 医療関係者のためのワクチンガイドライン 第3版. 2020
    http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/vaccine-guideline_03-5.pdf 2024/4/26参照
  • 11)厚生労働省:定期の予防接種実施者数
    https://www.mhlw.go.jp/topics/bcg/other/5.html 2024/4/26参照
  • 12)国立感染症研究所:風しん含有ワクチンの第1期・第2期・第5期定期予防接種の現状と課題 IASR 44, 53-55: 2023年4月号
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2609-related-articles/related-articles-518/11982-518r05.html 2024/4/26参照

2024年9月作成 VAC46O029A